テピクののんびりプリキュアblog

プリキュアについて、ちょこちょこ書いていきます

「戦隊ヒロイン」と「男の子のプリキュア」~ジェンダー問題に切り込んでいたスーパー戦隊~

ファンはいるのに供給の無い「男の子のプリキュア

最近「ジェンダー(性別)」の考えの変化が大きくなっています。
東映グループの三大変身ヒーロー・ヒロインシリーズの一角、プリキュアシリーズも例外なくその変化へ対応しつつあります。
プリキュアが好きな男の子が、お父さんやお母さんとプリキュア映画を見に来る姿も少数ですが見られるようになり、TwitterなどSNSで「息子がプリキュアが好き」と発信する親御さんもいらっしゃいます。
そもそも、女の子が「ドラゴンボール」「ONEPEACE」並みのアクションを繰り広げること、初代プロデューサーで現在はエグゼクティブプロデューサーの鷲尾天さんの方針もあり、プリキュアシリーズでは「女の子だから」「男の子だから」という表現は避けられ、「問題提起」という形でのみ使われています(『HUGプリ』15話で、愛崎えみる(のちキュアマシェリ)のギター趣味を実兄・正人が「令嬢でもある可愛い妹には似合わず不釣り合いだから」と否定する、など)。

ですが、2021年2月現在もプリキュアシリーズには男の子が変身し『オールスターズ』にカウントされるプリキュアはいません。

オールスターズ外のキャラクター(キュアエコー・キュアモフルンなども含む)では、

  • プリキュアの正体を知る同年代男子として『ハピネスチャージ』の相楽誠司くん
  • プリキュアに近い姿に変身した『プリアラ』の黒樹リオ=ピカリオくん
  • プリキュアとほぼ同等の姿に変身した『HUGプリ』の若宮アンリくんを始め、野乃森太郎・愛崎正人など市民の皆さん

プリキュアに近い男の子・男性陣ですが、いずれも「プリキュアとは違う立ち位置」であり、『プリアラ』『HUGプリ』の2例は「一時的な変身」であることから『オールスターズ』のプリキュアとは、完全に区別されています。

※リオくん(スタッフの間で『キュアワッフル』と通称)やアンリくん(『キュアアンフィニ』と自称)は、プリキュアだ!と言う方もいるかと思いますが、「変身アイテムのおもちゃなどで商品化される『男の子のプリキュア』」の話なので、ここでは取り合いません。ご了承下さい。

企画の段階で既に考慮されていた『スーパー戦隊シリーズ

では、同じ『チームで戦うスーパーヒーロー』であるスーパー戦隊シリーズには、なぜ「戦隊ヒロイン」がいるのか。
そう思い、Wikipediaの記事を調べてみると驚きの記述が。

『ゴレンジャー』のプロデューサーを務めた平山亨は、戦うヒロインを登場させた理由に、子供たちの間の「ヒーローごっこ」における女子の不遇な扱いを挙げている。ごっこ遊びの題材が『仮面ライダー』であれば、「蜂女」のようなショッカー怪人か、さらわれる人質しか女子の役割がなかったからである。
(引用大元:鈴木美潮『昭和特撮文化概論 ヒーローたちの戦いは報われたか』(集英社クリエイティブ))
ja.wikipedia.org

言い方を変えれば「戦隊ヒロインがいるのは、なりきり遊びの輪に女の子が入っていけるようにしたかったから」ということです。
流石に当時のジェンダー観では「女の子が戦隊のおもちゃを買う」ことは難しかったとは思いますが、方針転換せずとも「女の子が戦隊のおもちゃを買う」ハードルを下げやすくなっていたのは、今となっては大きいのではと考えます。
さらに『サンバルカン』の時には、「戦隊ヒロイン」を登場させなかったことへの抗議によって制作側も女の子の視聴層に対する認識を改めたそうです。

プリキュア』は間違っていたわけじゃない、けど・・・

プリキュアは「女の子だってあばれたい」という企画時のメモ書きの通り、メインターゲットの棲み分けとしては正しかった。
また、シリーズが十数年続く先のことまで予測できないのは、仕方のないことだと思います。
そして、シリーズ初期から「男の子キュア」を登場させていた場合、シリーズの流れが大きく異なっていた可能性もあるので、全てのシリーズ作品が好きな自分は一概に「間違いだった」と言い切りたくありません。

でも本当にこのままで良いのかな?というところもあります。
「『仮面ライダー』のなりきりで女の子は適役か人質役しかなかった」とあるように、プリキュアでも「男の子がなかなかプリキュア役で遊びづらい」のは解消できてないと思います。
冒頭で触れた「キュアアンフィニ」の登場で、お母さん・お父さん世代には「男の子がプリキュアでも良いんだ」という意識が広まりつつあり、周りの視線は和らぎつつありますが、それでも「まだ足りない」というのが自分の考えです。

やはり、『プリキュアオールスターズにカウントされる、男の子が変身するプリキュア』の登場。
そして、その声が収録された『変身アイテムのおもちゃ」の発売。
ジェンダー意識」を取り上げるのであれば、そろそろ真面目に考えてほしいと思います。

『生みの親』は全面肯定、あとは売り込む側のやる気次第

『男の子が変身するプリキュア』の登場、そして『その声を収録した変身アイテムのおもちゃ』の発売は、何も困難なことではないと思います。
生みの親である初代プロデューサー、鷲尾天エグゼクティブプロデューサーは、2016年の春映画『映画プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法!』公開時に刊行の「プリキュア新聞」で、

①男の子のプリキュア
極端な話ですけど、子どもたちが熱狂してくれるのであれば、本当は検討から外しちゃいけないんですよ。
(以下、割愛)
―お父さんお母さんのためのプリキュア新聞(スポーツニッポン刊)

と「男の子キュア」の登場を全面肯定しています(割愛部分でも大事な話をしていらっしゃいますが、ここでは未引用)。
となれば、番組のメインスポンサーでありおもちゃ販売担当のバンダイ、そしてABCテレビABCアニメーションADKエモーション、東映アニメーションの関係各社が一歩を踏み出せるか次第。
スーパー戦隊での実績が十分なほどあるはずなので、プリキュアでも試す価値はあるはずです。

クロスオーバー映画については、(願わくば最初から出してほしいけど)追加キュアにすればTVシリーズ放送時の作品に出さなくて済み、翌年・翌々年の作品も台詞は少なくて済みます。おもちゃも可愛いままで大丈夫。キャラクターデザインも、キュアショコラ・キュアフラミンゴのようなかっこいい系にすれば良いのでは。
コスチュームの売れ行きが心配?なら、店舗販売なしで、Amazonや家電量販店のECサイトプレミアムバンダイなどのネット限定発売にすれば良いと思います。
(あまり良いことではないですが、『プリアラ』ではキュアショコラのプリチューム(コスチューム)がプレミアムバンダイ限定でした)
今からでも遅くないと思います。どうか、男の子がプリキュアに変身するシリーズを早く作ってほしい。
そう思いながら私は「トロピカル~ジュ!プリキュア」を楽しんでいます。

最後に

プリキュアが好きな男の子、戦隊や仮面ライダーが好きな女の子たちへ。男の子がプリキュアが好きだったり、女の子が戦隊や仮面ライダーが好きなのは恥ずかしいことじゃないよ。「好き」を捨てないで、めいっぱい楽しんで。
お母さん・お父さんへ。もし息子さんがプリキュアのおもちゃ・衣装を欲しがったり、娘さんが戦隊や仮面ライダーのおもちゃを欲しがったら、「男の子だから」「女の子だから」を買わない理由にしないで下さい。そして、誕生日やクリスマスのプレゼントとしてで良いので、ちゃんと買ってあげて下さい。
買ってあげたほうが、素敵な思い出、いっぱいできますよ。

おわり